パルメニデス:存在の不変性と真理の道―エレア学派の創始者の哲学とその影響
パルメニデスの生涯
パルメニデスは、古代ギリシャの哲学者です。
南イタリアにある都市のエレアに生まれ、筋道の通った哲学や超越した思想を持つエレア派の学派の創設者です。
名門の家柄の出身で、祖国エレアの法律を制定したのがパルメニデスです。
エレア学派の創始者
パルメニデスの哲学的思想は、アナクシマンドロスの弟子にあたるクセノパネスからも学び、彼にならって詩の形式で、哲学を説いたと言われています。
また、ピタゴラス学派のアメイニアスに師事したとも言われ、著作物としては、教訓詩「自然について」だけですが断片的に現存しています。
最初の頃のギリシャ哲学において、とても考慮深く、複雑で難しい考えを持ち、逆説的でありながらも、形而上学や自然学の発展に影響を与え貢献してまいます。
パルメニデスの考え方や内容は、今の時代でも根本的な部分について、捉え方がそれぞれ違います。
彼の形而上学での考えは「ある」がメインで、「存在する」という意味で捉えられ、「~である」という叙述としての意味にもとれます。
他には、パルメニデスが一元論者だとして、どのような意味をつけ、一元論を説いたのかなど、話し合うことはたくさんあり、後世が感化する考えについても、捉え方は、それぞれ違う見方ができるので、とても幅広く奥深い思想です。
パルメニデスの哲学
哲学者のヘラクレトスは「この世の全てのものは変化し、永久に変わらないの存在などない」と説きましたが、パルメニデスの哲学的思想は「この世の全てのものは変化しないし、永久に変わらない存在である」と説いています。
ヘラクレトスの考えは、感性的に言えば正しいですが、主知的(知性・理性などの知の機能を、他の感情や意志の機能より上位に置くこと)に捉えると、「無いものから物が生じ、ミカンからイチゴに変化する」という謎めいたものになります。
真の存在は、消滅せず変わらず永遠にあり続けるという考えで、哲学史において初めて、筋道の通った考え方を哲学に取り入れたのが、パルメニデスでした。
感性的に捉えられる世界は変化を続けていますが、変化は「在る」から「無」になり、「無いもの」が「在ること」になります。
主知的にいうと、無から有が生じ、有から無になるのは、矛盾するという考え方で、感性よりも主知的に、在るものは変わらず、在るとしました。
木の成長など、目で見てわかるかと言えば、微妙なところで、人間の感性というのは、その程度のものであり、パルメニデスは、感性的にではなく、主知的に世界を理解しようとしました。
「万物不動説」と「目に見える自然界の不調性」に対して、「感性は自分たちに錯覚をみせている」と説き、変化とは偽りとしました。
「存在は変化しない」とは
パルメニデスの哲学的思想は、感性的なものの現象を抽象的にいう「アルケー」や「幾何学的なもの」という考えではなく、「有る・在る」という考え方を「あるものはあり、あらぬものはあらぬ」としました。
「あるものは、唯一、揺るがない、変わらない、主知的な真理の道だけで認識し、探求が可能」、「あるものは、認識されず探求は不可能」とした認識論です。
主知的で、かつ理屈にあう考えのもと、感性的ではなく、超越的な揺るがず変わらない根本を説いた最初の哲学者がパルメニデスでした。
パルメニデスのいう変化は、「有が無になること」や「無が有になること」で、変化しないという考え方は、あるものがあると語る。
つまり、あることは可能、あらぬものは不可能です。
物質的に何かがあることを在るとして、その存在は変化しないということですね。
「すべての存在は現在に限られる」
エレア派の存在論は、感性的なものではなく、理性(ロゴス)を優先する理性主義で、ひらめきや体験に反する考え方を持っています。
なお、世界を「変化や発生し消滅する物理的な現象」と「超越的で永久に変わらない存在」に分ける二元論や、その超越した存在を神とするのは、パルメニデスより前に、彼の師であるクセノパネスによって、既に説かれています。
パルメニデスは、あるものは生まれず滅びない。過去にあったこともなく、あるであろうとしたわけでもなく、現在「ある」のである。
今「ある」ものは「ある」もの以外ありえないので、無いものから生じていません。
「ある」ものが別の「ある」ものに存在しないため、「ある」ものが「無」になることもありません。
存在は新たに生じることなく、滅びることもない。
この考えがパルメニデスの存在論の結果です。
のちに、後世の存在論発展のベースになっていきます。
「偽りの道」と「真理の道」
パルメニデスは、「真理の道」を語る叙事詩の中で、「ある」の道が「真理の道」であり、それと反対の道である「あらぬ」の道は探究が不可能な「偽りの道」であるとしています。
彼を祖とするエレア学派の存在論は、感性よりも理性主義で、その主張は著しく経験や直感とは異なる内容です。
「アキレスと亀」で有名なパラドクスは、運動が幻覚であり存在しないことを示すために、パルメニデスの弟子のゼノンにより提起もしています。
パルメニデスの哲学の影響について
パルメニデスの業績は、大きな衝撃をもたらし、哲学者プラトンの哲学を通して後世の哲学に感化させています。
のちに、プラトンがパルメニデスを高く評価しています。
主知的で把握できる生じることも滅することもない「有」と、感性で把握できる移り変わる2層の構造を、最初に発見したのはパルメニデスだと。
イデアの原型をパルメニデスの考えの中から見つけたと、プラトンの考えを引き継ぐ人たちは言っています。
また、プラトンが「パルメニデス」という対話篇の本の中で、若く未熟なソクラテスのイデア論の中で、問題を見つけ解決に導いたと語っています。
このことから、プラトンがパルメニデスを高く評価していることがわかります。
後に、プラトンのイデア論は、パルメニデスの生じることも滅することもない思想とヘラクレトスの全てのものの移り変わりの思想を調和させたものと言われ、イデア論はパルメニデスの考えが影響して成立しています。
プラトンは、彼の対話篇の「パルメニデス」や「国家」などで、パルメニデスの根本の考えを神話化して伝えています。
パルメニデスの哲学的思想は、エレア派だけでなく、新プラトン主義の「一者」やアリストテレスの「不動の動者」キリスト教の神学、グノーシス主義など広い範囲に影響し、西洋におけるそれぞれの思想の系譜の元祖になっています。
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